井戸の使用ルール

災害時の利用者の井戸の使用ルール(手引き)を定めている 自治体は極めて少ない。当会が東京都の井戸行政アンケート調査で調べたところでも、井戸所有者のためのルールはあっても、利用者(被災者)のためのルールは皆無であった。われわれが知る範囲では、大阪府が両方の運用手引きを定め、周知を図っている稀な自治体である。

井戸所有者が求めていること

市内の井戸調査を進める中で、災害時に他人(被災者)に井戸を使わせることに否定的、または消極的な井戸所有者が多くいることが分かった。その数は井戸所有者のおおよそ半数にも及ぶ。理由は、自宅の井戸水が涸れてしまわないかという心配、見知らぬ者が敷地には入ってきて、傍若無人に振舞わないかという心配である。前者については心配する必要はない。被災者が生活用の目的でくみ上げる程度の水量で井戸は涸れることはない(昔は村が集団で一つの井戸を使っていた)。後者については阪神淡路大震災の事例として、被災者が争うことなく、マナーを守り、所有者と協力し合いながら井戸を使っていたとマスコミが報じていた。とは言え、もし自治体の手で「災害時の被災者の井戸の使用ルール」が定められていれば、自宅の井戸を安心して開放してもよいという井戸所有者が、数多くいることも事実である。

大阪府の井戸の手引き

2018年10月2日に、大阪府では「災害時協力井戸」に対する井戸の手引き書を作成した。この手引きの特徴は、 災害時に井戸を利用する府民のために、使用上のルールを具体的に定めたものである(④を参照)。

小平井戸の会が提唱する井戸の使用ルール

小平井戸の会では、震災対策用井戸、またはこれに指定されていない井戸に対して、「ご近所助け合い井戸」(善意の井戸)として、使用ルールを記載した看板を掲げることを勧めている。看板の製作や取り付けを希望される方は、当会まで連絡していただければ、ご相談に応じます。

小平井戸の会の推奨する看板

実際に震災対策用井戸に取り付けた看板

井戸の使用ルールづくりに向けて

災害時に、井戸の所有者が安心して井戸を提供できるためには、使用者のための井戸の使用ルールづくりと市民への周知が必要だ。小平市議会においては、過去に当会員の2人の市議会議員が、使用規則の制定の必要性を質してきた。市の答弁は「井戸は個人の所有物であり、市が規則を制定するものではない」というものだった。。だが、個人の善意だけに頼った井戸行政では、協力してくれる井戸所有者の増加は難しい。当会は今後、請願書を通じて市に対して使用ルール(手引き)づくりと市民への周知を求めていきたい。